実話犯罪調査碌『犯罪者vs探偵社』〜覗く女〜

『郵便物を見る女』

この依頼をしてきたのは、都内のアパートに住む老夫婦でした。

この夫婦の話では、最近になって自宅に届く電気料金や水道料金などを、何者かが封を切って置いていくといいます。

封を切られた郵便物は、公共料金関係だけにはとどまりません。証券会社からの手紙に、親類、友人からの手紙など、ありとあらゆる封筒が開けられたのだといいます。

しかし、なぜか郵便物が盗られた事はなく、ただひたすらに中身を覗いていくだけ。この不気味な悪戯をなんとか辞めさせたいと思い探偵社に調査を依頼したのです。

調査開始

この不気味な犯人を探すために、まずは怪しい人物を見かけていないかアパートの管理人さんに話を聞く事にしました。

すると、驚くべき事に依頼者と同じような被害を受けている入居者が他にもいるとの事で、警察にもすでに被害届を出しているとの事です。

ちなみに、第三者が正当な理由無く信書（郵便物）の封を開ける事は『信書開封罪』と言われる犯罪に当たり、それが立証されれば一年以下の懲役、もしくは20万円以下の罰金となります。

しかしこの犯罪は映像証拠以外での立証はほぼ不可能なため、監視カメラの設置や長期間の張り込みが必要となります。

その旨を管理人さんに確認した所、「こちらとしても困っているので是非やって欲しい」と言ってくださったため、アパートの集合郵便ポスト付近に隠しカメラを設置し、撮影が難しい夜間には調査員の張り込みを行う２重の監視体制を引く事となりました。

そして監視２日目の夜、調査員が張り込みをしている最中、郵便ポストの付近に不審な動きをする人物が現れました。

郵便マニア

その人物は、およそ40歳前後と見られる小太りな女性で、長い髪は腰の辺りまで伸びていました。

この女性はアパートの住人では無かったため、すぐに暗視装置付きカメラを起動。電子変換されたライトグリーンの世界の中で、女性はしばらく周囲を確かめながらポストに手を入れる姿が映し出されました。

ポストに付き入れた手を何度かまさぐった後、女性は幾つかの郵便物を確認。それが終わると、また次のポストに手を入れ、同じ行為を何度か繰り返しました。

そして何度か手を入れた後、ある部屋のポストから一枚の郵便物を取りだすと、シール式の部分をめくり、その中身を確認。再びその郵便物を同じポストに戻し、何食わぬ顔をしてその場を立ち去りました。

犯行の現場を撮影しおえた私達は、そのままこの女性の尾行に移りました。
女性はそのまま住宅街を歩いた後、現場から100メートル程離れた場所に一軒の住宅に入るのを確認したのです。

その後

その後、信書開封の罪で訴えられた女性は、精神低な障害がある事が判明し、責任能力が無い事から罪には問われず厳重注意に終わりました。

この犯罪はそれほど重い刑ではないので、再犯が起きたとしてもそれほど心配することはありませんが、多くの犯罪を起こす人物の初期の犯罪傾向として、周辺住民とのトラブルなどが上げられる以上、軽犯罪だとしても決して甘く見てはいけません。

また、信書開封を許してしまえば、その他多くの個人情報が抜き取られ悪用される事すらも許すことに繋がりかねませんので、自分の郵便物を誰かが盗み見た形跡があれば、徹底した対応が必要でしょう。

なんにせよ、小さな犯罪でも見過ごしてはいけません。
犯罪は犯罪。どのような形であれ、犯行を行う物を特定し、その行為を止めさせなければなりません。